2008年7月1日付 IHT紙 ヘンリー・キッシンジャーOp-ed ”Unconventional wisdom about Russia”
テーマは、ロシア新体制についての視点と米国の対露外交のあり方について。キッシンジャーは、ロシア新体制は、権力の抑制と均衡を導入する政治体制の発展かもしれないという見方をしており、米国は、これを忍耐と歴史的理解をもって見守り、米露協力の推進を図るべきである旨を主張している。
*コメント*
キッシンジャーは、米国とロシアという大国間の協力を重んじる立場。ウクライナ問題の棚上げを主張していることについては、米国内でも大きな反発があろう。
【概略】
1.ロシア大統領にメドヴェージェフ氏が、首相にプーチン元大統領が就任したのは、プーチン元大統領の圧倒的権力とその積極的な外交が継続することを意味する、と一般には理解されている。しかし、現在モスクワに生まれつつある権力構造は、こうした理解よりも複雑であるように思われる。
2.私は、ロシア政治に新しい局面が生まれつつあるという印象を持っている。一種の権力の再配分が行われつつある。
3.ロシア大統領選挙は、権力を強化する段階から、現代化の時期へと移行したことを示した。ロシア政府が、大統領と首相の2つの権力の中心をもって運営されていくことは、後世、これまでロシアに欠けていた、権力の抑制と均衡を備えた政治体制への進化が開始したのだ、と映るかもしれない。
4.米外交に対する意味合いは何か? ロシアが、国家安全保障政策の政策策定とその実施について大統領と首相の間で実質的な分担方法を見出すために必要とする間を持つことができるよう、ブッシュ政権と大統領候補は、人前での発言を慎重にするのが賢明である。
5.ロシア人の大部分は、民主的なロシアを作ろうとする米国の態度を、傲慢かつロシアの再生を阻む決意でいるものと見なしている。しかし、ロシア史の中で最も期待のできる時期にあって、このような雰囲気が持続するとしたら残念である。我々は、忍耐と歴史的な理解とをもつことによって、ロシアにより多くの影響を与えることができる。
6.地政学的現実は、米露両国が戦略的協力を行うかつてない機会が生じていることを示している。
7.私は、プーチン元大統領下のロシアの政策を、信頼できる戦略的パートナー、とりわけ米国が好ましいパートナーであるが、これをもつことを追求していたことに特徴づけられると見ている。
8.ロシアと米国には、核拡散の問題のような、世界の核問題について指導力を発揮する特別な義務がある。
9.ロシア・ウクライナ間の問題については、両国が国際関係の性質をどのようなものと観ているか、がその根底にある。この問題で対立すれば、他の問題での進捗の妨げとなる可能性があるため、ウクライナの問題は棚上げにすべきである。
10.4月のソチ共同宣言は、米露両国の戦略的対話のロードマップである。これを実践するのは、米露両国の新政権である。
(出典⇒http://www.iht.com/articles/2008/07/01/opinion/edkissinger.php )
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