2018年5月13日日曜日

紙のつぶて戦争シリーズ (タイ編)

紙のつぶて戦争シリーズ (タイ編)

海外主要紙に時折掲載される任国大使の読者投稿。
見過ごされがちだが、追跡してみるとそこには国際外交の一端が垣間見られるもの。
そこで、目についたものを記録して何か学べることがないか探してみたい。

掲載紙:ウォールストリート・ジャーナル紙(2017年12月8日付、A16面)
投稿者:Busadee Santipitaks (タイ外務省、官職名記載なし)
見出し:Thailand Fulfills Its Duties On  North Korea Sanctions

対象となった記事:
2017年11月18日付 (World News)記事
Asian Nations Squeeze Pyongyang


【タイ外務省の主張】

タイもまた朝鮮半島情勢を入念に観察してきており、北朝鮮の国連安保理決議に違反した行動につき非常に懸念している。よって、我々は一貫して国連決議による北朝鮮制裁を順守しており、これには、貿易及び投資の制限も含まれる。本年最初の9か月間における我々の北朝鮮との貿易は、前年比94%超減少して約160万ドルとなっており、現在タイの外国貿易総額のたった0.0004%を占めるに過ぎない。タイは完全に順守するために国連の専門家パネルとも協議してきている。


Points  to Ponder:
①これは事実誤認を訂正するものだ。ただし、記事の記述に反論するのではなく、「タイもまた…」と始めて、記事に寄り添う形で記述している。
②投稿者の所属はタイ外務省としてあり官職名を記載していない。webで調べるとタイ外務省 情報局長となっている。ニューデリー大学で学士号(英語学)、日本・アセアン奨学金でタフツ大学フレッチャースクールで修士号を取っている人物。
③元記事が出てから20日近く経っており、執筆者としてはもっと早く掲載してほしかったのではないか。

以上

2018年5月11日金曜日

紙のつぶて戦争シリーズ (エジプト編)

紙のつぶて戦争シリーズ (エジプト編)

海外主要紙に時折掲載される任国大使の読者投稿。
見過ごされがちだが、追跡してみるとそこには国際外交の一端が垣間見られるもの。
そこで、目についたものを記録して何か学べることがないか探してみたい。

掲載紙:ワシントンポスト紙(2017年12月5日付、A20面)
投稿者:Yasser Reda 駐米国エジプト大使
見出し:Don't blame Egypt for the terrorist attack in Sinai

対象となった記事:
2017年11月29日付 社説
Egypt's misguided terrorism answer


【在米国エジプト大使の主張】

当該社説は、本質的にシナイで発生した現代史上最悪のテロ攻撃について、今般のテロ攻撃やその他世界中で起きているテロ攻撃を起こしている憎悪に満ちた過激派イデオロギーを非難するのではなく、エジプト政府を非難している。

ワシントンポスト紙は、シナイに基盤を置く当該テロ細胞は現政権以前に存在していたことやアル・シシ大統領政権下でエジプトが何十億ドルもの資金をシナイの経済発展のために拠出してきたことを認識しておらず、今般の悲劇を使って米国のテロとの戦いにおける極めて重要な同盟国であるエジプトを非難している。今般の過激派の攻撃に対する同紙のアプローチと他所で起きた過激派の攻撃に対する同紙のアプローチが対照的であることには困惑させられる。

過激派に、我々を分断させるのを許すのではなく、我々はあらゆる側面からテロリズムを打ち破るための我々の団結を再確認し、改めて強化しなければならない。エジプトと米国はまさにそうしたことを行っている。①反乱勢力対策能力強化のための合同軍事演習、②イスラム教指導者との取組み、③経済改革、④地域の安定を促進する外交的なリーダーシップなどがその例だ。

的外れの非難はためにならない。成功するには、あらゆる側面で協働するとともに、過激派の行動に目を奪われたり、過激派の行動によって我々が分断されるのを許したりしないようにしなければならない。


Points  to Ponder:
①これは反論投稿の一つのお手本だ、との第一印象を受けた。
(ア)自国が批判されたとき、その批判が見過ごしている事実を挙げて反論
(イ)相手の行為(社説でのエジプト批判)が、共通の敵の罠(エジプトと米の分断)にかかることだと指摘したうえで、敵の罠を超越する方策(協力の強化)をともに(エジプトと米国を指して、weとかourとかusを使っている)取ることを提案
(ウ)エジプトと米国の協力事例や同国がとってきてた対策の実績を列挙してアピール
(エ)最後にもういちど、記事の批判となすべきことを簡潔に述べて終える

②覚えるべきパンチの効いた一文。
 Casting blame in the  wrong places doesn't help.
 的外れの批判はためにならない。

③社説への反論投稿であるからか、与えられた文字数が多いような気がする。もしかしたら、数字を作ってこの仮説をテストできるかもしれない。

以上

2018年5月10日木曜日

紙のつぶて戦争シリーズ (中国編)

紙のつぶて戦争シリーズ (中国編)

海外主要紙に時折掲載される任国大使の読者投稿。
見過ごされがちだが、追跡してみるとそこには国際外交の一端が垣間見られるもの。
そこで、目についたものを記録して何か学べることがないか探してみたい。

掲載紙:フィナンシャル・タイムズ紙アジア版(2018年5月9日付、8面)
投稿者:Zeng Rong 在英国中国大使館広報担当官
見出し:Diplomatic move reflects trend on China

対象となった記事:
2018年5月1日付 記事
Dominican Republic switching allegiance from Taiwan to China 及び同記事に対する読者投稿(5月5日付)
執筆者:

【在英国中国大使館広報担当官の主張】

当該記事及び読者投稿には、中国とドミニカ共和国との間の外交関係樹立について、及び台湾海峡の両岸の諸関係について、多くの正当化されないコメントが含まれている。

世界には中国は1つしかない。

中国人民共和国が、中国を代表する唯一の正当な政府であり、台湾は中国領土の不可分の部分である。

中国とドミニカ共和国の外交関係樹立は、一つの中国という原則が時代の潮流であることを示すいまひとつの証明である。

我々は、中国とドミニカ共和国の外交関係樹立によって両国が広範に協力する展望が開けるであろうことを信じている。ドミニカ共和国が発展するかつてない機会と、目に見える利益が両国民にもたらされることであろう。


Points  to Ponder:
①この反論投稿の標的となった記事及び読者投稿には多くの誤りが含まれていると述
 べるだけで、誤りを各個撃破するのではなく、「ワン・チャイナポリシー」について中
 国の立場を主張している。

②執筆者は大使ではなく、大使館の広報担当官名となっている。この役割分担の基準には
 興味あり、おいおい判明することを期待している。

以上

2018年5月8日火曜日

紙のつぶて戦争シリーズ (キューバ編)

紙のつぶて戦争シリーズ (キューバ編)

海外主要紙に時折掲載される任国大使の読者投稿。
見過ごされがちだが、追跡してみるとそこには国際外交の一端が垣間見られるもの。
そこで、目についたものを記録して何か学べることがないか探してみたい。

掲載紙:ウォールストリート・ジャーナル紙(2018年5月7日付、A16面)
投稿者:Jose Ramon Cabanas Rodriguez キューバ駐米国大使
見出し:Cuban Government Responds to an Editorial

対象となった記事:
2018年4月23日付 社説
”Cuba Gets a Castro Convertible”
執筆者:WSJ 論説委員(社説)

【駐米キューバ大使の主張】

米国企業社会の報道は、そのキューバに関する記事は予見可能であり、社説については特にそうであった。ウォールストリート・ジャーナル紙をはじめとする新聞は19世紀にキューバがスペインの権力から解放されたことに反対であった。その後、20世紀前半になって、こうした報道機関は当初は軍事的に、その後米国企業によって経済的に侵攻されたことを支持したキューバの汚職した政治家を称賛した。そして最後に、こうした報道機関は1959年以来キューバ革命を熱心に悪者扱いにした。

だが、貴紙の社説でキューバを指して使われた汚らしい言葉に不意を突かれた。

貴紙が改めて行おうとしている、キューバにいる「反対派」を助力しようとする努力は全く成功しないであろう。歴史は賢明であり、キューバ系の併合派の名前は忘れても、教養を受けた地球上の人であればだれもが、カルロス・マヌエル・デ・セスペデス、ホセ・マルティ、アントニオ・マセオ、フリオ・アントニオ・メラ、エルネスト・ゲバラ、フィデル・カストロといった独立派の人々について話すことができるだろう。

現在貴紙がいまなお有する読者の一部を維持するため、再びキューバを批判する前に、あるいは他のラテン・アメリカないしカリブ諸国を批判する前に、どうかまず自分たちを鏡でみることから始めていただきたい。


Points  to Ponder:
①ずいぶんとまぁ辛辣な論調。反発を主題とする論調にすれば、読者の後味が悪くなって悪印象を作るというコストがあるが、それでもキューバ国内の読者の留飲を下げるメリットが上回ったと考えてよいか?

②米国の企業社会の対キューバ論調は予見可能なものだったが、今回は言葉遣いが汚く(sordidness)、不意を突かれたと、堪忍袋の緒が切れたのでやむなく反論したとの印象を与えようとしている。また、直接的には汚い言葉遣いを引用していない。

③カストロ家のフィデルのみが挙げられていることについて、何かを読み込んでよいのか考え続けたい。単に生存している人は挙げなかった、というだけの可能性もある。

④歴史の力を論証材料にしたり、英雄の名前を多く挙げていることはお国の政治体制と結びつけて考えてよいだろうか。

⑤キューバのみならず、ラ米、カリブ諸国への批判をも牽制していることから、これらの諸国を味方につけようとしていることがうかがわれる。

以上

2018年5月2日水曜日

紙のつぶて戦争シリーズ (シンガポール編)

紙のつぶて戦争シリーズ (シンガポール編)

海外主要紙に時折掲載される任国大使の読者投稿。
見過ごされがちだが、追跡してみるとそこには国際外交の一端が垣間見られるもの。
そこで、目についたものを記録して何か学べることがないか探してみることにしたい。

掲載紙:ニューヨーク・タイムズ紙(2018年4月27日付、12面)
投稿者:Ashok Kumar Mirpuri シンガポール駐米国大使

対象となった記事:
2018年3月29日付オピニオン欄
”What Trump Is Learning From Singapore - and Vice Versa”
執筆者:Kirsten Han

【駐米シンガポール大使の主張】

Kirsten Han氏の記事は、シンガポールを政府批判者は黙らされて、麻薬運搬人は絞首刑となる「専制主義の天国」であるかのように描写している。

シンガポールは60か国以上の報道機関が認められており、議論が盛んに行われている。

シンガポールは、誤った報道の拡散に対処しようとしている。

シンガポールは特定の薬物を特定の量以上運搬した犯罪者に死刑を科している。厳しい法律とその執行がなければ、とっくの昔に国際麻薬運搬者の巣窟になっていたことだろう。

世界経済フォーラムはシンガポールの公共機関は透明性高く効率的と評価している。米国政府の『ワールド・ファクト・ブック』もシンガポールは著しく開放的で汚職がないとしている。

ハン氏の描写したような国を私は知らない。
(I  cannot recognize the country Ms. Han describes.)


Points  to Ponder:
①最後の一文がパンチが効いている。覚えておきたい。
②ダボス会議、米政府刊行物を主張の補強材料としていることに注目。

以上